2011年10月29日土曜日

ゼミ論構想

1章 研究の目的

1.1. 問題の所在
現代の先進諸国では、かつてのような急速な経済成長が一段落し、成熟社会への移行が起こっている。そのような社会では国の豊かさを測る基準としてGDPに代表されるような経済的な指標ではなく、「国民の幸福度」を用いようという動きがみられる。今回の研究においては、個人の属性や、社会に存在するさまざまな要因が、人々の幸福度にどのような影響を及ぼすのかを解明したい。幸福度を引き上げる要因、引き下げる要因を見極めることにより、人々が生きやすい社会のあり方を考える材料になるのではないだろうか。

1.2. 研究目的
人々の幸福度には所得の多少が大きな影響を及ぼすことが分かっている。しかし、同レベルの所得を得ていたとしても、個々人の属性や意識の違いによって幸福度には差が生じることも分かっている。所得以外に幸福度を左右する要因について分析を行いたい。具体的には幸福度の規定要因として、「格差・不平等意識」や「労働」が考えられる。「格差・不平等意識」については、社会に存在する機会の不平等、結果の不平等が人々の幸福度にどのように影響するのか、「労働」については、働くことによって得られる所得以外の要素(いきがい、社会的地位、人間関係など)の持つ効果について明らかにしたい。

1.3. 先行研究
・大竹文雄、白石小百合2010『日本の幸福度』日本評論社
・高坂建次2008「幸福の社会理論」放送大学教育振興会
・佐野晋平、大竹文雄 2007 「労働と幸福度」 日本労働研究雑誌 49(1),4-18,2007-01
等を挙げ、要約を記載する。

1.4. 仮説
①日本人の幸福度は機会の不平等より、結果の不平等によって阻害されやすい
かつて日本が「一億総中流社会」といわれていた時代においては、周囲の人々と同程度の所得を得て、同程度の消費を行い、同程度のライフスタイルを享受することが人々の最大の関心事だったと考えられる。このように他者との比較において、所得や生活水準など“結果”を基準に据える傾向が現代の日本人にも当てはまるのではないだろうか。
②日本人の幸福度は結果の不平等より、機会の不平等によって阻害されやすい
仮説①の逆である。望ましい社会のあり方について、機会が各人に平等に与えられてさえいれば、その後の競争によって生じた結果の不平等については許容すべきだ、と考える者も多い。日本は米国などに比べて「競争」を是とする考え方が浸透しているとはいえないかもしれないが、それでも“機会”の平等を重視する意識が現代の日本人にある程度存在していると考える。
③労働によって得られるいきがいや社会的地位、人間関係は人々の幸福度を引き上げる
近年の雇用の不安定化により、職に就くことのできない人、失業経験のある人が多く発生していると考えられる。そのような人々の幸福度は低いことが分かっているが、彼らの幸福度の低下は、所得を失ったことによる影響だけでは説明できず、アイデンティティの喪失や社会からの冷たい視線、将来への不安など様々な原因が考えられる。裏を返せば、人々は労働によって所得以外にも様々な効用を得ていると考えられるのではないだろうか。

2章 方法
・「暮らしと仕事についての東京住民調査」
・「暮らしと仕事に関する仙台市民調査」 を主に用いる。
個人の属性、機会・結果の不平等に対する意識や実感、失業経験の有無、などを独立変数に設定。幸福度の代替として生活満足度を従属変数に設定し、分散分析や重回帰分析など適切な手法によって分析を行いたい。

3章 分析結果
4章 結論
先行研究との比較を行いながら、分析結果について考察したい。

3年 野口敬太

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